「家族が亡くなり、いろいろな手続きが必要だと言われたけれど、何から始めればいいの?」 「役所や銀行に行かなければならないらしいけれど、期限はあるの?」
大切なご家族との別れ。深い悲しみの中で、残されたご家族には容赦なく「相続手続き」という現実的な作業がのしかかってきます。
この記事では、「相続手続きとは具体的に何をすることなのか?」という基礎知識から、絶対に守らなければならない期限、そして完了までの具体的な5つのステップを分かりやすく解説します。
1. 相続手続きとは?
相続手続き(そうぞくてづき)とは、亡くなった方(被相続人)が持っていた財産(預貯金、不動産、株式など)や義務(借金やローン)を、残された家族(相続人)へ法的に引き継ぐための「具体的な事務作業」のことです。
前回の記事で解説した「遺産相続」がルールの話だとすれば、「相続手続き」はアクション(行動)の話です。 具体的には、市役所、法務局、銀行、証券会社、税務署などの各機関に対し、戸籍謄本などの必要書類を提出し、名義変更や解約、税金の申告などを行っていく一連の作業を指します。
2. 【超重要】これだけは守りたい相続手続きの期限カレンダー
相続手続きには、法律で厳格に定められた期限があります。この期限を過ぎると、多額の借金を背負うことになったり、税金のペナルティを受けたりする恐れがあるため、まずはスケジュール全体を把握しましょう。
- 7日以内:死亡届の提出
- 市区町村の役場へ提出します。これが全ての手続きのスタートです。
- 3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の手続き
- もし亡くなった方に多額の借金があり、財産を引き継ぎたくない場合は、この期間内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。放置すると借金も背負うことになります。
- 4ヶ月以内:準確定申告
- 亡くなった方に事業所得や不動産所得があった場合など、亡くなった方の代わりに所得税の申告と納税を行います。
- 10ヶ月以内:相続税の申告・納付
- 遺産総額が「基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)」を超える場合、税務署への申告と納税が必要です。
- 3年以内:不動産の相続登記(名義変更)
- ※2024年4月1日から義務化されました。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。
3. 具体的な相続手続きの5つのステップ
全体像と期限を把握したら、次は実際に手を動かす順番を見ていきましょう。相続手続きは、原則として以下のステップで進めます。
ステップ1:遺言書の有無を確認する
亡くなった方の自宅、貸金庫、あるいは公証役場で「遺言書」がないかを探します。遺言書がある場合、原則としてその内容が最優先されるため、その後の手続きが大きく変わります。 (※自筆の遺言書を見つけた場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です)
ステップ2:相続人の調査・確定(戸籍謄本の収集)
「誰が法定相続人なのか」を法的に証明するために、亡くなった方の「出生から死亡までのすべての戸籍謄本」を集めます。結婚や転籍などで本籍地が変わっている場合、全国の役所からさかのぼって取り寄せる必要があり、相続手続きの中で最も時間と労力がかかる作業と言われています。
ステップ3:相続財産の調査と目録作成
預金通帳、不動産の権利証、郵便物などを手がかりに、プラスの財産とマイナスの財産(借金)をすべて洗い出し、「財産目録」として一覧表にまとめます。ここで借金が多いと判明した場合は、「3ヶ月以内」に相続放棄を検討します。
ステップ4:遺産分割協議と協議書の作成
遺言書がない場合、ステップ2で確定した相続人全員で、「誰が・どの財産を・どれくらい引き継ぐか」を話し合います(遺産分割協議)。全員が合意したら、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。
ステップ5:各種財産の名義変更と払い戻し
作成した遺産分割協議書や集めた戸籍謄本を持って、各機関で最終的な手続きを行います。
- 銀行・証券会社: 故人の口座の解約・払い戻し手続き
- 法務局: 不動産(土地・家屋)の名義を相続人に変更する手続き(相続登記)
- 税務署: 必要に応じて相続税の申告
4. 相続手続きは自分でできる?専門家に頼むべき?
相続手続きは、時間をかければ自分で行うことも可能です。しかし、状況によっては専門家(司法書士、行政書士、税理士、弁護士など)に依頼したほうが、結果的にスムーズで安心なケースも多々あります。
【専門家に依頼した方が良いケース】
- 平日の日中に役所や銀行に行く時間を確保できない
- 相続人が多く、顔も知らない親戚がいる
- 亡くなった方の本籍地が何度も変わっており、戸籍集めが困難
- 不動産(土地や家)がある(※司法書士への依頼が一般的)
- 相続税がかかりそうである(※税理士への依頼が必須レベル)
5. まとめ:相続手続きは「段取り」がすべて
相続手続きとは、悲しみの中で進めなければならない煩雑な事務作業です。 しかし、「何を・いつまでに・どこで」やらなければならないのか、その段取りさえ把握していれば、一つずつ確実にクリアしていくことができます。
まずは焦らず、遺言書の確認と、戸籍の収集からスタートしましょう。もし「自分たちだけでは期限に間に合いそうにない」「難しくて手につかない」と感じたら、無料相談を行っている専門家の窓口を頼ることも、大切な解決策の一つです。
