「親が亡くなったから、とりあえずアパートを片付けて携帯を解約しよう」 「もったいないから、親の財布に入っていた現金で未払いの家賃を払っておこう」
家族が亡くなった後、良かれと思ってやってしまいがちなこれらの行動。実は、これらが原因で「多額の借金が発覚しても、二度と相続放棄ができなくなる」という恐ろしい事態に陥る可能性があるのをご存知でしょうか?
この記事では、一般の人が陥りやすい相続放棄の最大の盲点「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」について、絶対にやってはいけないNG行動とともに分かりやすく解説します。
1. そもそも「相続放棄ができなくなる」ってどういうこと?
相続放棄とは、プラスの財産(預貯金など)もマイナスの財産(借金など)も「一切受け継ぎません」と家庭裁判所に申し立てる手続きです。
しかし、民法という法律には「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」という恐ろしいルールが存在します。 これは簡単に言うと、「あなたが相続財産に手を出したり、自分のもののように扱ったりしたら、『相続する意思がある』とみなして、自動的に借金もすべて背負わせますよ」という決まりです。
一度この「法定単純承認」が成立してしまうと、後から「やっぱり数千万の借金があったから放棄したい!」と裁判所に泣きついても、手遅れになってしまいます。
2. 絶対にやってはいけない!3つの「うっかりNG行動」
では、具体的にどのような行動が「財産に手を出した(法定単純承認)」とみなされてしまうのでしょうか。代表的なNG行動を3つ紹介します。
NG行動①:親の預金からの「携帯電話・サブスク」の解約費用の支払い
亡くなった親の携帯電話料金や、動画配信サービスなどのサブスクリプション。「無駄な出費を止めなきゃ」と焦り、親の銀行口座から引き出したお金で未払い分や解約手数料を支払うのは大変危険です。 亡くなった方の財産から勝手に支払いを行う行為は、財産の「処分」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性が極めて高くなります。(※ご自身のポケットマネーから支払う分には問題ありません)
NG行動②:価値のある「遺品の持ち帰り」や「形見分け」
「親が大切にしていたロレックスの時計だから」「まだ乗れる車だから」と、資産価値のあるものを自分の家に持ち帰ったり、売却したりする行為は完全にアウトです。 写真や手紙など「経済的価値のないもの」の形見分けはセーフとされることが多いですが、貴金属、ブランド品、自動車などの処分は、明確に「相続した」と判定されます。
NG行動③:賃貸アパートの退去と、親のお金での「家賃精算」
親が賃貸アパートに住んでいた場合、大家さんから「早く部屋を片付けて退去してほしい」と急かされることがあります。 しかし、ここで親の財産を使って「未払い家賃」や「ハウスクリーニング代」を支払ったり、部屋に残された価値ある家財道具を勝手に捨てて(処分して)しまうと、単純承認とみなされるリスクがあります。大家さんに怒られても、「相続放棄を検討しているので、今は一切手をつけられません」と毅然と伝える必要があります。
3. 「お葬式の費用」は親の口座から出してもいいの?
ここで一つの疑問が浮かびます。「じゃあ、親のお葬式代はどうなるの?親の貯金から出しちゃダメなの?」という問題です。
結論から言うと、過去の裁判例では「社会通念上、相当と認められる範囲の葬儀費用」であれば、遺産から支払っても法定単純承認にはあたらない(相続放棄できる)と判断される傾向にあります。 ただし、身の丈に合わない豪華すぎるお葬式や、立派すぎるお墓を遺産で購入した場合は、財産の処分とみなされる危険性があるため注意が必要です。
4. まとめ:借金がありそうなら「一切触らない」が鉄則!
親に借金があるかもしれない、あるいは財産状況が全く分からず「相続放棄」の可能性がある場合は、「遺産には一切触らない・1円も動かさない」のが絶対の鉄則です。
- 親の財布の中身はそのままにしておく
- 銀行口座からお金を引き出さない
- アパートの解約や遺品整理は、専門家に相談するまで保留する
「良かれと思って」「常識的に考えて」という素人判断が、何百万円もの借金を背負う引き金になってしまいます。少しでも迷ったときや、大家さんや債権者から督促を受けて困っている場合は、自分で動く前に、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談してください。
